ファイナンシャルプランナーが生前贈与をおすすめしない理由

あおば司法書士事務所の司法書士松本です。
司法書士だけではなく、1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFPの資格も持っておりますので、相談の際はファイナンシャルプランナー(FP)の視点でもアドバイスをしております。

終活の一環として、生前贈与をしたい。子供に不動産を贈与したいという相談がよくあります。司法書士の視点でいえば、本人が希望し、子供もそれを望んでいるのであれば、お断りすることは出来ないのですが、FP視点でいうとあまりおススメはしないというアドバイスをすることもよくあります。

例えば、税金面です。生前贈与の場合、贈与税の対象になります。贈与税については、基礎控除が110万円ですが、相続時精算課税制度を利用すると2500万円までは贈与税を支払わなくて済む制度もあります。但し、贈与税の申告が必要です。詳細は、税務署か税理士に相談してくださいね。

また、不動産をもらった側には、不動産取得税がかかります。さらに、登録免許税といいまして、登記する際の税金も、1000万円の評価がついた土地を贈与すると20万円の登録免許税がかかります。金額的にも大きいです。

一方、不動産の名義を子供にしたいということであれば、相続の時にしてはどうか?とも提案いたします。

相続税の対象になりますが、基礎控除が3000万円ありますので、一般的なご家庭で相続税の心配をするケースは少ないのではないかと思います。また、不動産取得税は、相続の場合かかりません。登録免許税も、1000万円の評価のついた土地の場合4万円となります。この場合、家族関係の聞き取りを行い、スムーズな遺産分割が出来そうではない場合などには、公正証書遺言の作成をおススメして、死亡に円滑に名義変更ができるような準備をしておいたほうが良いでしょう。

先に名義を変更したいという理由の一つとして、相続のときに揉めそうだ。ということもよく聞きますが、生前贈与してそれが唯一の財産だった場合などには、遺留分の対象になりますので、結局、相続で揉めることになる可能性がゼロではありません。

ただ、ケースによっては生前贈与を行うこともあります。例えば、同居する子供さんが、将来ご自宅のリフォームを予定する場合などです。

大規模なリフォームをする場合、金融機関から住宅ローンの借り入れを行いますので、金融機関からの融資の条件として、建物の名義を住宅ローンの債務者(借りる人)に変更するよう要請されることもあります。リフォーム資金の借り入れを子供ではなく親名義でする場合には生前贈与は必要ありませんが、高齢な親御さんの場合、ローンの審査が通らない場合もあり、一般的には同居している子供さんが借り入れをする場合が多いです。

生前に名義を変更したいという相談に対して、ご家族の事情や動機などを聞き取ったうえで、より良い提案をさせていただいております。一概に、生前贈与はダメだとは申しませんが、上記の様なアドバイスの結果、「相続の時にまた事務所に来ます」と言っていただけることが多いの事実です。